血圧を素早く下げる薬 並み成分の宝庫[発芽玄米]で高血圧の治った人が大変多い
玄米には血圧を見事に下げる成分[ギャバ]が含まれ発芽させれば三倍に増える玄米以上の栄養価で白米並みにおいしい米
主食としての食品には、いろいろなものがあります。しかし、私たち日本人にとって、いちばん相性のいい主食は、米です。米なら、一日に何度食べても飽きることはありません。しかも、小さな米粒の中には、糖質・脂質・たんぱく質といった三大栄養素をはじめ、さまざまなビタミンやミネラル(無機栄養素)が、ぎっしりとつまっています。かつての日本人は、お米ばかり食べておかずは少しという、常識的には劣悪な食事をしていました。それでもなんとかやってこれたのは、米そのものが栄養の宝庫だったからです。 とはいえ、現在の日本の米を、手放しで礼賛するわけにはいきません。いまお話しした米のすばらしい栄養素は、特に玄米に多く含まれているものであり、現在の日本人が食べている白米にはかなり欠けています。 玄米は収穫した米からもみ殻だけを取り去ったもので、胚芽(将来芽になる部分)もそのまま残っています。この胚芽には、ビタミンB1・B2・B6・E、それに良質のたんぱく質などが多く含まれています。これに対して、精白した白米は、玄米から外皮や胚芽を取り除いてしまうために、栄養は玄米より少ないものになってしまうのです。 この点については改めていうまでもなく、多くの人がご存じでしょう。それでも白米のほうが人気が高いのは、玄米は消化吸収が悪いうえに、味の点でも白米より劣るからです。主食は毎日食べるものですから、食べにくいものは向きません。そのため、米といえば、いまでは精白米のことになってしまいました。 悲しいかな、栄養を選ぶか、味を選ぶかといわれたら、やはり食べやすい味のほうを選んでしまうわけです。しかし、最近この問題を一挙に解決するような米が誕生しました。それどころか、玄米以上の栄養価を持ち、なおかつ白米のように柔らかくておいしい、まさに理想的な米が登場したのです。それが「発芽玄米」です。
血圧を下げるギャバが玄米の三倍もある米
発芽玄米は、玄米を一定の温度の水に漬け、〇.五〜一ミリほど発芽させたもののことをいいます。たったこれだけのことをしたにすぎませんが、、発芽玄米はふつうの玄米よりはるかに栄養価が高くなっています。なぜでしょうか。発芽をするときに、それまで玄米の中で眠っていた酵素(化学反応を助ける物質)が目覚めて、活発に働き出し、さまざまな栄養素を作り出すからです。 例えば、たんぱく質はアミノ酸という物質がいくつも結合してできたものです。こうしたアミノ酸の大半が、ふつうの玄米より発芽玄米のほうが多くなります。特に、γ-アミノ酪酸(ギャバと呼ばれる)という血圧降下作用を持つアミノ酸が大幅に増えることで、発芽玄米はいま注目されています(ただし、γ-アミノ酪酸はふつうのアミノ酸とは違い、たんぱく質の構成成分ではない)。 ギャバの作用については、すでに一九六三年にスタントンというアメリカの学者が動物実験で、血圧を下げる作用があることを認めています。また、ギャバの誘導体(構造の一部が変化してできた化合物)に、脳卒中の後遺症や動脈硬化の後遺症などによる頭痛・耳鳴り・記憶障害・意欲低下などを改善するなどの効果があるとされて、医薬品にもなっています。 ギャバは、白米にはほとんど含まれていません。米のギャバは胚芽の部分に集中しているため、精白して胚芽を取り除いてしまうとギャバもいっしょになくなってしまうからです。したがって、いままでは米からギャバをとろうとしたら、食べにくい玄米から摂取するしかありませんでした。それが、発芽玄米の誕生により、もっとおいしく、たくさんとれるようになったのです。 米の胚芽には、一〇〇グラム中約五〇ミリグラムほどのギャバが、含まれています。ところが、これを発芽させると、酵素が働いて増えて、胚芽にあるギャバが三倍にも増えてきます。 アミノ酸だけではありません。高血圧をはじめ、さまざまな生活習慣病(成人病)を防ぐことでよく知られている食物繊維も、発芽玄米のほうが玄米より一〇〜一五%も増えてきます。さらに発芽玄米は、マグネシウム・カリウム・カルシウム・亜鉛などが、とりやすい形で豊富に含まれています。これらのミネラルも、高血圧を防ぐには欠かせません。まさに、日本人に多い高血圧を防いだり、改善したりするのにもってこいの主食が、発芽玄米なのです。さらに、フィチン酸といった有効成分も豊富に含まれていて、高血圧の予防に大いに役立っています。 すでにお話ししたように、発芽玄米は味の点でも満足がいきます。玄米が発芽すると、胚乳(発芽するときに養分を供給する組織)の外側のでんぷん質が、消化されやすい糖質に変わります。この糖質が新芽の成長につれて消化されるわけですが、糖質への変化と同時に、外皮や胚乳も柔らかくなります。その結果、従来の玄米とは比較にならないほど、甘くて柔らかく、そして消化しやすい玄米になってきます。 しかも、発芽玄米は白米と同じように、ふつうの炊飯器でふっくらと柔らかく炊くことができます。この点でも、新しい主食として理想的な条件を備えています。 日本人の好きな米を食べることによって、高血圧を予防することができるなら、これほどすばらしいことはないでしょう。
発芽玄米に豊富な有効成分と主な働き |
γ-アミノ酪酸 |
高い血圧を下げる。神経を鎮める。腎臓や肝臓の働きを高める。 |
食物繊維 |
高い血圧を下げる。また、高血圧を招く便秘や肥満を防ぐ。 |
フィチン酸 |
高い血圧を下げる。貧血を防ぐ。 |
マグネシウム |
高い血圧を下げる。 |
カリウム |
高い血圧を下げる。 |
カルシウム |
不足すると高血圧を招く。 |
亜鉛 |
生殖機能の低下や動脈硬化を防ぐ。 |
鉄 |
貧血を防ぐ。 |
イノシトール |
脂肪肝や動脈硬化を防ぐ。 |
フェルラ酸 |
活性酵素を取り除く。メラニン色素の生成を抑える。 |
トコフェロール(ビタミンE) |
活性酵素の働きを抑える。紫外線から肌を守る。コレステロールの増加を抑える。 |
ビタミンB1 |
神経の働きを調節する。脚気を防ぐ。 |
ビタミンB2 |
目や粘膜の炎症を防ぐ。 |
ビタミンB6 |
皮膚炎や貧血を防ぐ。 |
発芽玄米を白米に二〜三割まぜると味がよく、ギャバの必要量としても十分血圧を下げることがわかった発芽玄米
私たち日本人は、古くから高血圧が多いことでよく知られていました。そうした血圧を引き上げる原因には、さまざまなものがあります。日本人の場合、最も大きな影響を及ぼすのが、塩分の過剰な摂取でした。 そのため、国をあげての減塩運動がくり広げられてきました。その成果によって、高血圧による害が大幅に減ってきたのは事実ですが、それでもまだまだわが国が、「高血圧大国」の汚名を返上したわけではありません。 そこで、私たちがいま注目しているのは、日常よく摂取する食品で高血圧を防ぐことです。とりわけ日本人は米が好きですから、米で高血圧が防げたら、これほどいいことはありません。 実際、そうした米が誕生し、いま大きな注目を集めています。すでにご存じのように、発芽玄米のことです。発芽玄米に多量に含まれているギャバ(γ-アミノ酪酸)と呼ばれる成分には、高血圧を改善する作用のあることが、私たちの実験によって、すでに確認されています。 この実験の結果から、まず報告しましょう。私たちは、高血圧自然発症ラット(遺伝的に高血圧を起こす実験用ネズミ)に米の胚芽から得られたギャバを与えて、その効果を調べました。実験の方法は、ラットを、ふつうのエサで飼育したグループ(普通群)、ギャバを五%まぜたエサで飼育したグループ(五%群)、ギャバを一〇%まぜたエサで飼育したグループ(一〇%群)の三つに分け、一定期間ごとにその血圧を測定するというものです。 各群のラットの血圧は、実験開始当初はどのグループも、一〇二・三ミリにそろえてありました。それが実験を始めると、一二週間後には普通では二四一ミリと上昇していましたが、五%群では二二五ミリと上昇が少なく、一〇%群では二〇九ミリとほとんど開始時と変わりませんでした。 ギャバがラットの血圧の上昇を抑えているのは、この実験によって明らかです。 人間に対してのギャバの効果についても、ある報告があるので、これも紹介しておきましょう。この研究で対象となったのは、不眠・食欲不振・イライラなどを訴える更年期を迎えた(または四十〜六十代の)女性(平均年齢四十九歳)で、高血圧(あるいは血圧が高め)の人たち六人です。 この人たちにギャバを毎日二六ミリグラム与えて、その血圧の変化を調べてみました。 その結果は、ギャバを与えてから四週間後ではわずかな血圧低下傾向を示しただけでしたが、八週間後の時点では最大血圧(基準値は一〇〇〜一三九ミリ)が、一五一・七ミリから一四一・七ミリに、最小血圧(基準値は六〇〜八九ミリ)が八九・〇ミリから八〇・七ミリという具合に、微弱ですが、明らかに血圧の下がったことが確かめられています。 私の身の回りでも、ギャバを多く含む食品をとることにより、一六〇ミリ台だった最大血圧が一四〇ミリ台になったという話を聞いたことがあります。
白米に二〜三割まぜて朝昼晩一膳ずつ食べる
このようにギャバが高血圧に効果があるのは、さまざまな理由が考えられます。今のところわかっている理由の一つは、ギャバが腎臓の働きを活発にして、利尿作用を促し、高血圧を招く体内の過剰な塩分を体外に排泄する作用があることです。実験では、ギャバを与えていないラットは、腎臓のろ過装置の働きをしている部分の細胞(糸球体)が、激しく損傷を受けていました。それに対して、ギャバを与えたラットでは、その部分がほとんど損傷を受けずにすんでいました。ギャバは腎臓の細胞の損傷を防いで、高血圧を防ぐことが考えられます。 また、最近ギャバにはアンジオテンシン変換酵素の働きを阻害して、血圧の上昇を防ぐ作用があることもわかってきました。すでにお話ししたように、血圧を上げる原因にはいろいろありますが、その原因の一つとして、アンジオテンシンUという物質があげられます。 血液にあるアンジオテンシノーゲンという物質は、腎臓にあるレニンという酵素(化学反応を助ける物質)の作用を受けて、アンジオテンシンTと呼ばれる物質に変化します。この物質は、さらにアンジオテンシン変換酵素の作用で、アンジオテンシンUに変化します。このアンジオテンシンUに、強力な血管収縮作用があるため、血圧が上がるのです。 血圧降下剤の中には、このアンジオテンシン変換酵素の働きを阻害して、アンジオテンシンUができないようにする薬(ACE阻害剤)があります。ギャバにもこれと同じ働きがあることが、私たちの研究によって確かめられています。 とはいえ、発芽玄米でギャバを少し多めにとったぐらいで大したことはないと思われるかもしれません。しかし、米は主食であり、発芽玄米を毎日食べつづければ、その効果は大きく積もって、やがて健康を守るのに大きな影響を与えるのは間違いないでしょう。チリも積もれば山となるのです。 できたら、血圧を下げたり、高血圧を予防するためには、一日にギャバを三〇ミリグラムはとりたいものです。だいたい発芽玄米を白米に二〜三割混ぜたご飯を朝・昼・晩に茶碗一杯ずつ食べると、一日量で二〇〇グラム(ギャバの含有量は三〇ミリグラム)の発芽玄米をとることができます。 発芽玄米をこの程度、白米にまぜて炊くと、ご飯もおいしく炊けて、味の点でも満足がいくものになります。ぜひ試してみてください。
高い血圧を下げるギャバの効果 ●腎臓の働きを活発にして、利尿作用を促し、過剰な塩分を追い出す。 ●アンジオテンシン変換酵素の働きを抑える。
●梅ご飯ののり巻(1人分237キロカロリー) ●材料(4人分)/ 発芽玄米2カップ、梅干し(小)8粒、いりゴマ(白)大さじ2/3、ホウレンソウ2株、焼きノリ4枚 ●作り方/ @発芽玄米はさっと洗い、ザルに上げておく。 A梅干しは種を除いて細かく刻む。ホウレンソウは塩ゆでして細かく刻む。 B@の発芽玄米を炊飯器で炊き、炊き上がったら15分ほどむらして、Aといりゴマをさっくりとまぜる。 CBが冷めたら8等分し、巻きすの上に焼きノリを半分にして載せ、その上に1/8量のBを載せる。ノリの前後2センチぐらいは、ご飯を載せないで残しておく。 D向こう側に残したノリに水をさっと塗り、のり巻きを転がすようにして巻いていく。最後は巻きすを上から軽く押さえて形を整える。C、Dをくり返して、8本ののり巻きを作る。 Eぬれぶきんで、包丁を1回1回ぬぐいながら、Dののり巻きを切り分け、器に盛る。
文 大妻女子大学教授
大森正司 氏
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