南イタリアの明るい日差しに負けない、とびきり素敵な笑顔で 迎えてくれたのはルイーザさんでした。彼女は、エルコレ氏と 奥様のアンジェラさんと共に、ヴェレノージを支える大切なス タッフです。私たちはまず畑を見せていただくことになりまし た。とにかくよい天気で、トレビアーノ、カベルネ、ピノノワ ールと坂道を登っていくうちにすっかり汗をかいてしまいまし た。サンジョベーゼの樹の下には、間引きした葡萄がたくさん 落ちていましたが、アルバイトの人たちが「どうしてこんなに 良く実ったのに捨ててしまうの?もったいない!」と不思議が るとのことでした。エルコレさんの80歳になるお父様も、「 こんなもったいないことをするなら、もうおまえはうちの人間 じゃない!」とお嫁さんであるアンジェラに詰め寄るとか・・・・ 品質を上げるために必要な過程だということを理解してもらう のが難しいと、ルイーザさんは笑っていました。 | |
畑の仕事を引き受けているリノさんは、畑を見学する私たちにさりげなく葡萄を取ってく れたり、ルイーザさんを通しての質問(英語が話せないので)に答えてくれたりと、静か で優しい表情を見せてくれていました。おいしいワインを造る人たちは、何処でもみんな、 とてもいい顔なのです。優しくて、目が輝いていて・・・・さて、畑で葡萄の葉っぱのレ クチャーから、植付けの仕方、肥料の牛糞、樹齢200年のオリーブの樹の見学まで終え てセラーに伺うと艶やかな奥様アンジェラさんが大輪の花のような、これまた素敵な笑顔 を見せてくれました。ちなみに、ご主人のエルコレさんはめったに口を聞かないような無 口な人で、"仕事の虫"だそうです。 |
セラー前の作業場で目に付いたのは、小さな小さな除梗機。まるでおままごとのよう。「除梗機 はこれだけですか?」の質問に、「そうです。」の答え。目が点になりました。これだけ・・・・ しかし、これには訳がありました。葡萄を摘み取った時、重さによって葡萄を損傷させないた め少しずつ運び込むので、手桶も葡萄を運ぶ箱もとても小さいのです。一回に運び込まれる量 がとても少ないのでこれで充分と言うわけです。 |
そして、セラー入り口には、大きなつぼの中でプクプクと何かが発酵中。粉末になった培養酵母を 使うのではなく、この樽の中でいつも酵母を元気な状態で育てていて、必要なときに使うのだそ うです。フランス、ドイツ、イタリアといくつかの生産者を訪問しましたが、初めて見る方法でし た。とてもナチュラルな感じです。醸造方法で、興味深いのはバトナージュ、ピジャージュを一 切せず、樽に入れた果汁は一年間そっと置いておくということ。ヴェレノージのコクがあるのに、 透明感のある味わいはこの辺が所以なのでしょうか。 |
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仕事の虫のエルコレさんは、醸造中のタンクが気になって、日本からの訪問者などかまっている場 合ではないらしく、挨拶が終わると、隙あらばといった感じでセラーに消えていきます。私たち とのと写真撮影も彼にとっては迷惑だったに違いありません。本当にお邪魔しました。 |