ヴェネト州


ソァーヴェ・クラシコの卓越した生産者、カ・ルガーテ。創始者は現在87
歳のテサリ氏。彼は1930年代、毎日、ヴェローナの町のレストランまで
4箱のワインを馬に積んでとぼとぼと歩いて届けに行きました。レストラン
では彼のワインでなければダメだと言い、4箱のワインは一晩で売り切れて
しまうほどの人気だったそうです。馬で運べる荷は4箱が限界で、彼は毎日
届けに行かなければならなかったのです。今では彼の二人の息子、アメデオ
とジョヴァーニが素晴らしいワインを造っています。私はこの伝説のテサリ
氏にお目にかかることをとても楽しみにしていました。醸造所での丁寧な説
明の後、畑の見学とテースティングのためルガーテの丘にある小屋に伺うと、
畑仕事を終えたおじいちゃまが笑顔で迎えてくださいました。もう感激です。
さっそく記念撮影をさせていただきました。

カ・ルガーテには、ノーマルのソァーヴェ・クラシコ、シングルヴィンヤード
のモンテフィオレンティネ、そして、最高の葡萄のみセレクションして造られた
モンテアルトがあります。それぞれたいへん魅力的で、一般のソァーヴェ・ク
ラシコとは一線を画しています。今回の訪問では、どうしてこれだけの差が生
まれるのかよくわかりました。彼らは、全くの家族経営の小さな生産者ですが、
だからこそできるきめ細かで丁寧な葡萄の扱いで三種類にワインをそれぞれに
個性豊かなものにしています。15〜20ある区画の葡萄はそれぞれ別に圧搾、
発酵、熟成まで別のタンクで行われます。それぞれの畑の葡萄の状態によりで
きるだけ手をかけベストな状態に仕上げてからブレンドするためです。手摘、
ソフトなプレス、温度管理はもちろんですが、4回に分けて搾られる果汁も2
回目、3回目のものは、粗い目のフィルターに通しクリーンな状態にしてからタ
ンクに移されます。4回目に搾ったものは使いません。葡萄の摘み取り時期も
それぞれの畑の熟し方により4〜5週間かけて行われます。モンテフィオレン
ティネの葡萄はいつも完熟させ、その個性を充分に引き出すため、一番最後の摘
み取りになるそうです。すべてガルガーネガ種主体で造られていますが、全く
違う葡萄から造られている印象を与えたいとおっしゃっていました。その考え
方はいつも確実にワインに反映されています。

畑でお話をうかがっていると、ガルガーネガ種の特徴、耳について教えてくだ
さいました。ガルガーネガ種の特徴は房の上部に、二つの小さな房が耳のよう
になっていること。そして、ヴェネトの方言で耳のことを『レイチェ』と言う
そうです。レチョート(葡萄を4〜5ヶ月陰干ししてからワインを造ります。)
の語源はこの言葉で、昔は、この耳の部分だけで造られていたそうです。耳の部
分は、圧力も受けず、日当たりもよいことから、よい状態にあったでしょうか
ら、その健康な葡萄をレチョートにするのは理にかなっていたのでしょう。
  

案内してくださった弟のジョヴァーニさんは醸造と輸出担当、兄のアオデオさ
んが畑と国内担当とのことでした。ここ数年の間に彼らのワインの真価が世界
中で正当に評価されるようになり、人気も急上昇です。これからも、ソァーヴ
ェ・クラシコの域を越えたすばらしいワインを期待しています。


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