「日本から雨を持ってきたね。今雨は欲しくないよ。どうぞ帰りには持って帰ってください」 そんな挨拶で私たちを迎えてくれたリンゲンフェルダーさん。ダイデスハイムやフォレスト のすぐ北に位置するグロスカールバッハ村で醸造所を営むリンゲンフェルダー家は1570年代 にラインファルツに移転してきたのが始まりだそうです。9.7haの畑を持ちリースリング40% シュペートブルグンダー20%、ショイレーベ10%、ケルナー5%、ミュラートルガウ10%、ドル ンフェルダー8%、その他にケルナー、ポルトギーザー、シルヴァーナーなどを栽培してい ます。9月始めは、まだまだ夏の日差しいっぱいの暑い日が続くそうですが、私達が空港に 着くと冷たい雨が降っていて、それから毎日寒い日が続いていたのですが、リンゲンフェル ダーさんを訪ねたのも、小雨まじりの肌寒い午後でした。収穫前の大事な時期に雨を持ち込 んだ私たちにあの挨拶となったわけです。 彼の父上は白ワインの品質向上に努力しラインファルツで認められるようになってから30年 になるそうですが、彼もまた研究熱心な学者肌の人物で、ドイツワインの生産者の中では変 わり者といったところでしょうか。バリックを使用したワインの研究をしシュペートブルグ ンダーでその成功を収めています。グランピュイラコストやデュクリュボーカイユで働いて いたこともあるという彼は、フランスから新樽を輸入し、その樽でワインの熟成を行い、オ ーク香を与えるという方法でブルゴーニュのトップクラスのワインに近い味わいとボディを 持った赤ワインを造ります。セラーではドルンフェルダー(色素の弱いドイツ赤ワインの中 で濃い色を期待出来ることで注目されている)を樽試飲させていただきました。まだまだ醸 造途中でしたが、濃い赤紫で樽の風味が感じられる将来が楽しみなものでした。彼はワイン グートのホームページも開いているのですが、「ショイレーベ」を日本人がどのように発音す るかを知りたいので録音してのせる?と言って、私たちの宿泊しているホテルの食堂に朝早 くから、録音機を持ち込んで待っていたのには驚かされました。私達が帰国するとすぐに、彼 のホームページから私たち自己紹介や「ショイレーベ」の声を聞くことができました。とに かく何にでも研究熱心な、そして人柄と共にそのワインも個性的なリンゲンフェルダーさん でした。 |