LIFE BEYOND LIEBFRAUMILCH
by Stuart Pigott
ザールといえばエゴン・ミュラーといわれるほどの超有名蔵と比べ、彼、
ハインツ・ワグナーの名は全く無名に近いものですが、彼ほどワイン造り
にその身を捧げている人は、世界中のワイナリーを回りましたが他に全く
会ったことがありません。畑仕事から醸造、セラー内での作業も彼自身が
行っており、彼の育てたワインは、どんな有名な醸造元と比べてもひけを
とりません。機械での作業が不可能なたいへん険しい斜面にリースリング
のみを植え、その醸造方法は頑固なまでに伝統的です。
近年、ドイツワイン生産者の間で誰もがよりクリーンなワインを造ろうと
ハイテクに走り、ワインからいろいろ複雑なエキス分を取り除いてしまう
傾向がありますが、ワグナー氏は、彼のワインの風味が弱まってしまうの
を嫌い、昔ながらの製法を守っています。彼のワインは酸が多すぎるとい
う人もいますが、彼は「もし酸を弱めたら果実味も風味も弱まってしまう
し、何よりそんなことをしたら私のワインではなくなってしまう。」と言
って全く妥協せず、まさに他の若いドイツワイン生産者のお手本となるべ
き人物といえます。このようにスチュワート・ピゴットに評されたワグナ
ー氏ですが、1987年にはワイン生産者の最高の名誉であるスターツエーレ
ンプライズを受賞しました。世界中の雑誌や、ワインライターから高い評
価を得て、今では、その需要にこたえるにはあまりに希少なワインとなっ
てしまいました。ワグナー氏のワインを皆様にご紹介できることをうれし
く思っています。 |