MOSEL−SAAL−RUWER



私達を出迎えてくれたその親子は、素朴

で勤勉といった印象でした。エルベス家

を訪問したのは夕刻前だったこともあり、

まずは車で畑まで連れて行っていただき、

ユルツィガーの畑を見学。見上げると青

色粘板岩の岩山で、足元は粘板岩のかけ

らだらけです。もちろん葡萄の根元も粘

板岩のかけらで埋まっています。畑は想

像を絶する急斜面で、畑での仕事がかな

りの重労働であることが察せられます。
日本の農家と同じようにモーゼルのワイン生産者も、後継者問題で悩む人

が多い中、エルベス家にステファンさんという素晴らしい後継ぎがいらっ

しゃることは、ご両親にとっても、エルベス家のワインを愛す私たちにと

っても幸せなことです。ステファンさんは幼いころから、お父様を尊敬し、

仕事の手伝いもよくして、早くお父様のようになりたかったとのこと。素

晴らしいワインを造る寡黙な父を、心から尊敬しているステファンさんが

輝いて見えました。エルベス家に戻り試飲。99年のホッホゲベクスから、

96年、95年のアウスレーゼ、98年のアイスヴァインまで、9本のワインを飲

みましたが、上品な甘みと酸のバランスの良い優しい味わいで、どれも飲

む人を優しく包み込んでくれるようなワインです。試飲後、奥様のお料理

で夕食をいただきました。ローストした豚肉と、ポテト、そして、リース

リング。甘さが少しも邪魔にはならず、とても美味しくいただきました。

リースリングはなかなか懐が深いワインなのです。食後には、リースリン

グの澱(酵母)からできた蒸留酒と、一般的なかすとりブランデー、マー

ルをご馳走になり、気に入ったので一本ずつ分けていただきました。澱か

ら造られた方は、ラムレーズンの風味がして、とても美味。何時、誰と飲

もうかと楽しみにしています。アットホームなもてなしを受けて、エルベ

ス家のワインが今まで以上に好きになってしまいました。そして、この小

さな生産者が造る偉大なワインを日本の皆さんにも愛していただかなくて

は。


  

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