数々の苦難に打ち勝ちワインを造りつづけるジゴ ンダスの生産者ビュルルさんは、はにかみながら も笑顔で迎えてくれました。杖をつくビュルルさ んの横には、少年の雰囲気の残る息子さんがコン バースのバスケットシューズで立っていました。 一時は家を出ていたという彼ですが、近い将来に はきっとビュルルさんの素晴らしい片腕となって くれることでしょう。案内されたセラーは農家の 納屋といった感じで、プレス機や大樽も100年 近く前と変らない様子。彼の造るジゴンダスは、 60年から80年の樹齢の葡萄を使い、清澄、濾 過一切しないというつくりで、色濃くスパイシー な味わいのワインになります。ティスティングの 際には私たちのために用意してくれたらしい、真 新しいワイングラスを箱から取り出してワインを ついでくれました。(今までは不揃いのコップで ティスティングしていたそうです。)葡萄の持つ 果実味をストレートに感じるこのワインの魅力は、 やはりビュルルさんの人柄が反映されていると感 じました。飾らない二人の笑顔がとても印象的な セラー訪問となりました。 |
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ローヌルネッサンスより エドモンド ビュルル氏は軟弱な精神の持ち主なら挫折してしまうような災難に いくつも見舞われたにもかかわらず、素晴らしいワインを造っている。数年前、彼 は屋根から落ちて脊髄をひどく損傷してしまった。その結果、妻と息子は家を出 てしまい、彼はただ一人の葡萄園労働者の手を借りて、地所の切り盛りをし、ワイ ンを造らざるを得なくなった。そして23年エドモンドを助けてきたこの男も、 休暇でモロッコに帰った後、そのままそこに留まってしまった。さらに追い討ち をかけるように、エドモンドは、網膜はく離の手術を受けるはめに陥った。しかし、 茶目っ気のあるユーモアのセンスによって、彼はこれらの苦難を切り抜けた。 (注釈 91年の霜害、92年の洪水の被害のため、殆ど2年間ワインを造ること ができなかった。)彼の土地の大半にはグルナッシュが植えられおり、また葡萄 の樹は少なくとも、樹齢60〜70年である。ワインの製造には伝統を覆すよう なところは何処にもなく、大樽で6ヶ月間、次にキューヴで12ヶ月間の熟成へと 続いていく。 このように、ローヌルネッサンスで紹介されているビュルルさんですが、今は 家出から戻った息子さんがいっしょにワイン造りをしています。輸入当初全 く無名の生産者だったビュルルさんですが、今では有名生産者となってしま いました。しかし、その素朴な人柄は変わらず、ワインもまた、葡萄の味が ストレートに感じられる個性的で魅力的な味筋を守っています。 |