入江亮子氏のおうち酒簡単レシピ
第69回「蛤の酒蒸し」
啓蟄もすぎ、徐々に春らしくなってまいりましたね。
今月ご紹介するのは、清らかな多摩川上流にある小澤酒造さんの「澤乃井 東京蔵人」です。沢ガニのマークでおなじみの小澤酒造さんは、いわゆる吟辛で軽快なお酒が多いイメージですが、このお酒は生もと造りの純米吟醸酒。生もと造りで生じる酸できりっとしまった味わいがくせになるお酒です。全国燗酒コンテストでもプレミアム燗酒部門で金賞受賞しているとおり、50度前後の燗酒にしますと、ぐっと生もとらしさがでて、ふくらみを感じます。あまり冷やさず、常温以上でぜひ飲んでいただければと思います。
貝類が旬を迎えています。特に蛤はこの時期欠かせない貝ですね。そこで、今月の肴は「蛤の酒蒸し」にしました。貝類には余韻の長いうまみ成分”コハク酸”がたくさんあります。コハク酸は温めると出てくる旨味で、日本酒にもある成分です。
古くから酒の肴として知られているには理由があります。貝と酒のコハク酸が素晴らしい同調をするからです。そしてしっかりめの塩気も酒が進む大きなポイントです。どぶどぶと適当に酒を入れ、蓋をして貝の口が開くまで蒸せばいいだけの簡単料理で、味付けもまったく必要なく、貝のもっている塩味だけ大丈夫です。
最近は出汁割り燗なども流行ってきました。ちょっとお酒に蒸し汁を混ぜて飲んでみてはいかがでしょう。酒と蒸し汁の黄金比率を見つけるのも楽しいですね。
蛤は晩春から初夏にかけて産卵します。その後は味が落ちますので、ぜひおいしいうちに召し上がってください。
<材料>2人分
蛤 4個
酒 100CC
三つ葉 適宜
<作り方>
1.蛤は砂を抜き、洗っておく。
2.1を鍋に入れ酒をふりかけ蓋をして、口があくまで5分程度蒸す。
3.好みで三つ葉を刻み、吸い口にする。
<ワンポイントアドバイス>
1.貝はしっかり砂抜きして使ってください。
2.アサリ、ホンビノス(白はまぐり)など、二枚貝類なら何でもおいしくできます。
3.吸い口は三つ葉のほか、柚子、胡椒、黒七味などでもおいしいです。